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1日の食事のポイント必要な栄養をしっかり摂る

健康な体づくりの基本となる食事と運動。年間8000人ものスポーツ選手が指導を仰ぐ、日本一のスポーツドクターが、今月から一般の人にも役立つ知識をお伝えします。第1回は、健康に不可欠な栄養素について。食べ物をおろそかにして勝利はおろか、健康的な肉体の実現はおぼつかないのです。

〔監修〕 平石クリニック院長 平石 貴久

体によいものだけを食べる

 私のクリニックには1年間に8000人を超える、アマチュアやプロのスポーツ選手がやってきます。良い成績を残したい、勝利を勝ち取りたいなど彼らの思いはさまざまで、競技者ならではのケガや体の不調に悩まされることは少なくありません。
 そんな彼らにとって特に大切なことは「スポーツ栄養」です。どんなに優秀なコーチが付いているとしても、なによりも体づくりの基本である「食べ物」が大切にされていなければ、すべてが台無しです。
 それは、競技者だけでなく、すべての人に当てはまります。つまり、栄養状態がその人の健康的な生活の実現に大きく関わっているのです。スポーツはルールが大切ですが、強い競技者たちは常にベストなコンディションを保たなければならず、必然的に「体によいものだけを食べる」というルールを守っています。厳格とも思えるその態度は素晴らしい模範であり、見習うべき点は多いのです。

正しい科学的根拠のある知識を

 かつて競技の現場では、「競技中に水を飲んではいけない」、「試合前にはトンカツを食べる」などといった根拠のない理論が通用していました。例えば、プロサッカーではふくらはぎが痙攣することが多いのですが、体液中のマグネシウムやカルシウムを補うサプリメントの補給を指導することで、そうしたことは防ぐことができます。
 しかしながらスポーツ選手の食事が、何か特別なものだというわけではありません。主食となる炭水化物のご飯や麺類などに、たんぱく質を中心とした主菜、サラダなどのビタミン・ミネラルを豊富に含む副菜などをバランス良く食べることがまずは重要です。たんぱく質は、筋肉をはじめ骨格、血液、皮膚などの組織を構成する栄養素です。食事から摂取したたんぱく質は筋肉作りのほか、血液中のヘモグロビン合成のサポート、感染症などから体を守る、あるいは、ホルモンや神経伝達物質などの構成にも関係します。
 スポーツ選手が練習後にサプリメントなどでアミノ酸を摂取するのは、アミノ酸が再合成されたたんぱく質によって筋肉作りを促進するだけでなく、壊れた筋肉線維を修復するためでもあるのです。

五大栄養素をバランスよく

五大栄養素の働き  たんぱく質のほか、炭水化物(糖質と食物繊維の総称)や脂質(脂肪)は、体を動かすエネルギー源となります。栄養学では、これらの三つの栄養素を三大栄養素と呼び、「炭水化物60%(糖質は50%以上)、たんぱく質15%、脂質25%」くらいの比率で摂ることが理想とされています。これらの三大栄養素に「ビタミン」や「ミネラル」を追加した五大栄養素が理想的な栄養バランスといえるでしょう。
 さて、私たちは、生きていくために食事からエネルギーを摂取しなければなりませんが、それらは「kcal(キロカロリー)」として表されます。また、一日に摂取すべきエネルギー、糖質、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの量を年齢別、体重別、男女別などによって求めた基準値が「栄養所要量(食事摂取基準)」です。
三大栄養素の理想的な摂取比率  栄養所要量は激しい運動をしているスポーツ選手のほうが、一般的な日常生活よりも多くなりますが、一人ひとりのエネルギー量は、その活動度によって決まることは同じです。つまり、エネルギー所要量とは、1日の基礎代謝量(心臓の鼓動や呼吸、胃腸のぜん動、体温維持などのために使われる必要最低限のエネルギー)×生活活動強度で表すことができ、摂取エネルギーが多すぎると余分な脂肪がついて肥満の原因になるので、適切な量に調整する必要があります。
 個人の運動量に合った栄養所要量と、栄養素のバランスをとることが、スポーツ選手に限らずとも、健康的な生活の基本となるのです。


健康日本 vol.469(2007年4月号)より